タイ中央銀行、デジタル通貨の応用範囲を拡大

目次

  1. タイ中央銀行、デジタル通貨の応用範囲を拡大。銀行間から民間や一般市民向けも視野に
  2. 今までのデジタル・タイバーツ、『Project Inthanon』
  3. 第一フェーズ、分散型台帳を活用した国内銀行間同士の送金
  4. 第二フェーズ、スマートコントラクトを活用した国債のライフサイクル管理
  5. 第三フェーズ、国際送金に関する実証実験
  6. 新たな二回の実証実験
  7. 今となってなぜ、中央銀行がデジタル通貨に熱心か


タイ中央銀行、デジタル通貨の応用範囲を拡大。銀行間から民間や一般市民向けも視野に

タイ中央銀行が、2018年から企画し、2019年に三度の実証実験を行った分散型台帳ベースのデジタル通貨を、銀行間から民間企業や一般市民に対しても応用する二度の実証実験の計画を明らかにした。中国のデジタル人民元など、世界的に中央銀行発行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency : CBDC)がトレンドになりつつ中、タイ中央銀行が中心となって2018年末から8つの銀行と一緒に進めたProject Inthanonだが、銀行間向けのデジタル通貨(Wholesale CBDC)に注力した方向から、民間企業や一般市民でも利用できるようなリテール型デジタル通貨(Retail CBDC)も視野に入るようになった。

タイ中央銀行、ファイナンシャルマーケットオペレーショングループの総裁補佐、ウァチラさんが、Suthichai Liveという番組でのインタビューで回答したところによると、リブラのように、将来は一般市民でも利用できるよう期待はしているが、当初は、企業、特に体制が整えている大企業と一緒に進めたい、今年は二つの実証実験のプロジェクトを計画しているが、6月にも一つ目のプロジェクトを発表する予定だと答えた。


今までのデジタル・タイバーツ、『Project Inthanon』

タイ中央銀行は、2018年に、バークレイズ銀行などが中心に設立されたR3社と共同セミナーを開催し、その後、デジタル・タイバーツの実証実験を行うためのProject Inthanonを立ち上げ、2019年から、R3社のCordaプラットフォームを利用した実証実験を三度行った。タイ中央銀行に加えて、タイの銀行8行(バンコク銀行、クルンタイ銀行、アユタヤ銀行、カシコーン銀行、SCB銀行、タナチャート銀行、スタンダードチャータード銀行、HSBC銀行)が実証実験に参加し、どれも銀行間のWholesale CBDC型であった。


第一フェーズ、分散型台帳を活用した国内銀行間同士の送金

銀行が中央銀行に預け入れている預金をデジタル通貨にして、交換や決済できるようにした。また、自動的に流動性を供給する仕組みも取り入れ、決済が怠ることのないようにした。プロジェクトは、2019年1月に完了し、報告書が公開された。


第二フェーズ、スマートコントラクトを活用した国債のライフサイクル管理

国債のトークン化をして、決済時の引き渡しを可能にし、また、利払い、満期における元本の返済、そして、取引所などのセカンドマーケットでの売買、国債を担保にする借り入れ(Repurchase Agreement)に関する機能も実装し、国債市場の実活動に極めて近い機能を実装できた。また、疑わしい取引の監視や外国人投資家に関する活動モニター機能もあり、タイバーツへの投機や相場操縦を監視する銀行の負担を減らす。


第三フェーズ、国際送金に関する実証実験

複数の仲介者が介在する現状を打破して、エンド・トゥ・エンド決済や送金を目指す。国際送金業務をよりスピードよく、安くなりつつも、従来の安全性を保てるようにする。この第三フェーズにおいては、タイ中央銀行は、香港金融管理局(HKMA)と協力し、国際送金や為替規制関連業務に関する実証実験を進めた。(報告書はまだ公開されていない。)

特に、国際送金業務において、ソリューションを提供しているR3社のコンソーシアムは、世界中にある、300以上の銀行、金融機関、公的機関などが参加している。同じCordaプラットフォームを利用することで、金融機関同士の国際送金や国際決済がしやすいと期待されている。


新たな二回の実証実験

去年に進めたWholesale CBDCを中心とした三度の実証実験に対し、タイ中央銀行は、リテール型デジタル通貨にフォーカスする二つの実証プロジェクトを検討している。その二つのプロジェクトとは、 第一プロジェクト、中央銀行から、商業銀行を経由した民間企業向けの決済システムの実験をする。大企業と提携し、企業グループ内でも子会社などが多数あり、複数のブランチに分かれていくため、詳細一つ一つつめて、システムの仕様を固めていく予定。

第二プロジェクト、上記の第一プロジェクトと同じだが、国際送金ネットワークと接続する予定。すでに、分散型台帳の国際送金に関する実証実験を一緒に進めた香港金融管理局(HKMA)と協力し、香港金融管理局が民間企業を探してきて銀行と接続してもらい、タイの民間企業と送金の実験をする。香港金融管理局が利用しているプラットフォームは、タイ中央銀行が利用しているプラットフォームと異なるが、国境を超えてどのように接続するかが実証実験の課題となる。


今となってなぜ、中央銀行がデジタル通貨に熱心か

タイ中央銀行のウァチラさんによると、リブラのような民間が発行するデジタル通貨が去年話題となったため、シンガポール、カナダ、イギリスなどが、一気に リテール型デジタル通貨に注目するようになった。先行した中国やスウェーデンを参考にしたところ、リテール型デジタル通貨の多くは、二段階オペレーション(two-tier operation)の場合が多く、中央銀行が紙幣の代わりに、コインやトークンを発行し、デジタル通貨の保有を商業銀行経由で、民間企業や市民へ流通させる。二段階オペレーションは、現在の貨幣流通と似ていて、市民が直接中央銀行にアクセスできず、商業銀行がまだエコシステムの中の位置づけがあり、既存の金融機関のビジネスへの影響がなくて済むのがよい点だとインタビューで明らかにした。また、法的な規制、プライバシーの度合、国民への影響、そして、最も重要な金融システムおよび金融機関への影響を考慮しながら、進める必要があり、最終的には必ずしも全部が分散型台帳になるとは限らないとも述べた。

各国の中央銀行共通の課題だが、リスクがない通貨を国民に届ける義務があり、競合が多数出現してくるに伴い、タイ中央銀行としては、新世界における経済をデジタル通貨で支えつつも、金融システムの安定を保ち、金融政策の実行ができるようにする必要があるのである。

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