タイの銀行は健全か?また、CLMVの景気はどうなるか?

目次

  1. タイの銀行は健全か?また、CLMVの景気はどうなるか?
  2. タイの銀行は、バーツ危機の時と比べて健全か?
  3. 海外からの収入に依存するCLMVは、過去20年間で最も低成長へ。


タイの銀行は健全か?また、CLMVの景気はどうなるか?

タイの有名な経済系シンタンクであるカシコーン研究所が、今後のタイとアセアンの経済に関わる2つの重要なテーマについて分析結果を発表しました。一つは、タイの銀行は、バーツ危機の時と比べてどれほど健全か、もう一つは、コロナの流行がどの程度CLMV経済に影響を与えるかである。本コラムは、この二つのテーマについての分析結果を共有したいと思います。CLMV は カンボジア(Cambodia)、ラオス(Laos)、ミャンマー(Myanmar)、ベトナム(Vietnam)の4か国の総称です。


タイの銀行は、バーツ危機の時と比べて健全か?

1997年にタイを発端としてアジア通貨危機が発生し、多くのアセアン国々や韓国の通貨が暴落して、銀行の倒産が相次いだ。その原因は、景気の悪化による不良債権であり、タイの銀行の不良債権が全体の50%に登った。銀行部門における1000億バーツ規模の増資、銀行の閉鎖、合併、外資の資本受け入れなど多くの対策が行われた。それに対して、今のコロナ流行が銀行部門に大きな影響を与えるかもしれないが、アジア通貨危機の時と同じような事態にならないと確信できる4つの要因がある。

  • 第一、アジア通貨危機と比べて健全性に関わる管理がより徹底された。金融監督に関わる様々な基準やその執行の監督、チェックアンドバランスのメカニズムなどが1997年当時あまり徹底しなかったため、リスクの高い融資が行われ、変動相場後の多くの不良債権につながった。その不良債権が、銀行に対する信用を揺るがし、金融部門の危機につながった。それに対して、現在、タイの商業銀行は、バーセルIIIの基準を守り、将来における様々なリスクに対応するためのリスク管理が行われた。1997年の自己資本比(CAR)が9.23%であったのに対して、2019年においては、自己資本比率(CAR)が19.32%であり、より高い水準である。
  • 第二、流動性が高い水準にある。銀行の預金に対する貸出金(融資)の比率を示す預貸率が1997年においては、110%あったのに対して、2015–2019年においては、97.05%に低下した。
  • 第三、商業銀行の融資ポートフォリオがより分散的になった。1997年以降、より中小企業や個人向けの融資を実施したため、全体に占める小口融資が11.9%から39.6%に上昇した。目的はポートフォリオの分散と、利益率の上昇であり、融資が大企業・中堅企業を集中した1997年と異なる。
  • 第四、不良債権比率が1997年より低い水準。1997年、不良債権比率が52%あったのに対して、現在の不良債権比率が3.14%という低い水準にとどまる。

しかし、銀行の健全性が上昇する代わりに、銀行部門の収入と利益の成長が1997年より低い水準にあるという現実を認めないといけない。総資産利益率が、1997年までの5年間平均が1.5%だったのに対して、2015-2019年の平均は、1.19%に低下した。低成長の経済が融資の低成長につながり、また、Fintechやノンバンクの出現により、電子決済、送金無料化などがより活発になり、手数料収入の減少につながった。

今回のコロナ流行により、主力事業の成長が望めないだけでなく、モラトリアム、債権の構造改革などのようなコロナ救済策に協力したことで発生した影響も2020年度から順次に決算に反映されていくと予想される。


海外からの収入に依存するCLMVは、過去20年間で最も低成長へ。

コロナの流行により、CLMVの国々、特に、観光や輸出に依存する国は、大きな影響を受けた。それぞれの国の事情について、カシコーン研究所は以下のようにまとめた。

  • ・カンボジア、観光や輸出という海外からの収入に大きく依存するため、最も大きな影響を受けた。観光部門が60%縮小すると予想され、輸出も流行が続いている欧米市場へ大きく依存するため、10%の縮小が予想され、2020年の経済成長が全体的に0.9%縮小する見込み。
  • ・ベトナム、中ぐらいの影響を受けた。海外からの収入については、輸出部門のみ。貿易相手も多くあり、輸出リスクの分散がうまくできた。また、主要な輸出商品もエレクトロニクス製品やエレクトロニクス部品であるため、リモートワークが普及するに伴い、コンピューター機器や電子回路などの需要が増加し、輸出が全体的にあまり減少しない見込み。ベトナムの輸出そのもの減少が5%と試算されているが、政府が経済刺激を目的とする給付金や減税を行ったため、3.6%の成長を維持できると考えられる。
  • ・ミャンマー、コロナによる影響が低い水準である。その原因は、輸出と観光による収入がまだ少ない。しかし、主力の輸出商品が天然ガスであるため、燃料価格の暴落により、大きな影響を受けた。また、第二の輸出商品が衣服織物であるため、中国の工場閉鎖やEU市場の縮小により影響を受けた。そのため、ミャンマーの輸出は、10%減少する見込み。ただし、EUがコロナで影響を受けたミャンマー織物産業の救済をするために、5億ユーロの緊急援助資金(Quick Assistance Fund)を設立し、雇用の維持や家庭の消費に貢献すると考えられる。ミャンマーGDPの1%に相当するこの基金は、国民の収入を支え、家庭消費の成長をコロナ流行前の水準に維持できる。また、ミャンマーのインフラ投資は、そのまま予定通りであり、2020年の経済成長を4.3%に維持できると考えられる。
  • ・ラオス、コロナによる影響が低い水準である。同じく輸出と観光による収入がまだ少ない。しかし、コロナの影響を大きく受けたタイからの観光客に大きく依存するため、ラオスの観光業も大きな影響を受けると考えられる。輸出については、5%の減少が見込まれるが、多くの輸出商品は、鉱山物や電気であるため、雇用にあまり影響しない。観光業も発達したばかりで、GDP比が小さいため、国民の収入にあまり影響しない。そのため、家庭消費の成長は、コロナ流行前と同水準である。また、70億ドル規模の高速鉄道投資は、計画通りであるため、海外からの直接投資はさほどコロナの影響を受けず、ラオスの経済成長は、2020年において、3.9%を維持できると考えられる。

コロナの影響でCLMVの国々は、過去20年で最も低成長を迎えたが、3.4%水準を維持できる見込み。また、CLMV経済圏は早い復活が見込まれ、2021年においては、6.4%、2022年においては、6.5%の経済成長が予想される。

出典

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