タイの大企業は、コロナ対策でどんな試行錯誤をしているのか?

目次

  1. タイの大企業は、どう試行錯誤してコロナ危機を乗り切ったか
  2. SABINA、女性向けブラジャーの生産能力を転用し、マスクを製造
  3. SPRCやPTT GCの石油精錬大手、ジェット燃料から軽油へ設備転換
  4. SWISSHOTELが従業員を派遣し、清掃、スパー、トレーニングや空調整備サービスを提供
  5. 中小飲食店が鍋容器を販売


タイの大企業は、どう試行錯誤してコロナ危機を乗り切ったか

コロナ危機により、従来の決算説明会を開催するのが難しくなって来た中、タイ証券取引所(SET)がタイの上場企業向けにオンラインの決算説明会スペースをユーチューブにて用意し、2020年6月27時点においては、145社の決算説明会の動画がアップロードされている。コロナ特需と関連する、ほんの一部の企業を除き、ほとんどの企業が業績悪化に見舞われ、キャッシュフロー状況の説明に翻弄した結末となった。

その中、危機に見舞わられながらも、独自の試行錯誤と工夫をし、少しでも業績の緩和を食い止めようとした事例がいくつか観察できた。その一部をここでを紹介したい。


SABINA、女性向けブラジャーの生産能力を転用し、マスクを製造

SABINAは、5つの工場を持つタイの大手女性ブラジャーを製造するメーカーである。有名な女優を起用し、大々的なプローモーションを仕掛けようとしたそのタイミングに、コロナの流行と、デパートの営業停止命令が出された。デパートの売り場に多く依存する当社は、まず、職場がなくなった販売員に個人フェイスブックなどを経由してブラジャーの販売をするよう指示し、販売員のコミッションが維持できるように働きかけた。また、生産が減少したに伴い、一部の人員を箱詰めなどに回し、増加してきたオンライン販売向けの小包みに対応できるような体制を整えた。

それにもかかわらず、ブラジャーは一番求められるものではなかったため、売上の減少や生産の低下が免れない。その危機の中でたどり着いた事業は、マスクの製造である。医療マスクが不足し、布マスクに対する需要が上昇してきた段階で、受託製造(OEM)という形で布マスクの製造を開始した。繊維製のマスクは、ブラジャーと比較して、製造が簡単である。

OEMのほか、SABINAは、タイの生命科学研究所(TCELS)と協力し、TCELSのプロジェクトで開発されたWIN-MASKSを製造して、タイで最も有名な病院であるシリラート病院に寄付した。繊維製のマスクだが、PM2.5や水滴の防止ができ、5ミクロンの飛沫も防止できる。また、繊維製であるため、品質を維持したまま、30回まで洗濯ができる。

このようなOEMやCSRプロジェクトを経験し、自社ブランドのマスクも立ち上げることになり、今後も販売を続ける方向になった。5つの工場でマスクの製造認証を受け、最新のブランドでは、日本のSEKマーク認証を受けたバクテリア防止ができるマジックシルバーを活用し、飛沫および紫外線を防止できるコーティングもした。疫病対策はもちろん、使いやすい、ニキビが発生しないという点に対する配慮も製品に組み込まれた。SABINAは、個人および、従業員にマスクを着用させる必要がある企業を視野に販売をしていき、もう一つの主力製品として育ちあげていく狙い。このような工夫を経て、従業員を解雇せずに、経営を続けられたのである。また、従業員が地方に帰国して感染リスクを高めることがないよう、休業もせずに、このような工夫でずっと工場を運営し続けた。


SPRCやPTT GCの石油精錬大手、ジェット燃料から軽油へ設備転換

最も大きな打撃を受けた一つの産業は、石油の精錬事業である。移動の需要が大きく減少し、石油関連製品の価格が暴落したにもかかわらず、設備の調整が比較的に困難である。石油精錬事業でタイの上場企業でもあるSPRCおよびPTT GCはどれも付加価値が高いジェット燃料に依存していたが、飛行機がほとんど飛ばなくなったため、転換を強いられた。

SPRCおよびPTT GCの発表によると、どの企業も既存の設備を転換させて、軽油を多く精錬できるようにした。多くの人が外出を控える中、軽油はトラックやピックアップ車などの物流向けの自動車に多く利用されているため、需要は、他の種類より比較的に高い。また、原油の価格が安くなったにもかかわらず、以前から仕入れていた原油ストックの原価が高かったため、売価が安く、原価が高いというダブルパンチを受けた。原価が一番安くなった時期に仕入れていた原油は、次の四半期に徐々に反映されるため、石油関連製品の需要が上昇すると伴い、業績が改善される見込みである。


SWISSHOTELが従業員を派遣し、清掃、スパー、トレーニングや空調整備サービスを提供

上場企業だけではない。外資系のホテルも大きな影響を受けた。ホテルは、営業停止ではなかったが、顧客が大きく減少したため、従業員への給与がコストを圧迫した。帰国者の隔離施設などへ転換するのも一部あったが、その中、大手外資系のSWISSHOTELが余った従業員の派遣サービスを提供するのに踏み切り、 三つのパッケージを発表した。

  • ・SWISSOTEL HOUSEKEEPING SERVICE:5つ星ホテルレベルの清掃ノウハウを売りに高品質の清掃サービスを提供する。
  • ・SWISSOTEL WELLNESS SERVICE:ボクシング、ヨガ、アロビックなどの専門トレーナーを個人トレーナーとして派遣し、指導する。価格は1時間1000バーツ。また、タイマッサージ、足裏マッサージ、アロママッサージサービスも提供し、マッサージ師を派遣する。全員、10年以上の経験があり、タイの保健省からタイマッサージおよび足裏マッサージの証明書をもっている。価格は1時間600−800バーツ。
  • ・SWISSOTEL MAINTENANCE SERVICE:一台、36000BTUまで500バーツという破格で空調の清掃サービスも提供する。このように経験のある人材が流出したりして、再開後のオペレーションに影響が出ないように、様々な工夫をして仕事を一定続けられるようにしている。


中小飲食店が鍋容器を販売

大手に限らず、中小企業の中でも大きく工夫をした事例があった。一番ダメージが大きい中小の飲食店も工夫を経て息を吹き返した。8店舗のしゃぶしゃぶ屋を経営しているPenguin Eat Shabuは、転換に苦労した。飲食店は、営業停止にならなかったが、 持ち帰りに限定したため、本来、皆で一緒に食べるというイメージのしゃぶしゃぶには、需要が大きく減少した。デパートの営業停止命令が出される前から、デパート内にある大型店舗を一つ一時閉鎖して準備を進めたが、全店舗で持ち帰り限定になると、収入の面で苦労し、雇用の維持も大変になった。

まず、200人ある従業員全員を正規雇用から日払い雇用に切り替えた。その代わり、その日の会社の利益は、従業員全員に分けて、オーナーが一切もらわなかった。閉鎖が始まった途端、デリバリーに切り替え、バイクのある従業員15人をライダーにした。多数あるデリバリーと差別化をするため、350バーツ、1日100個限定のミステリーボックス11時11分毎日予約販売を開始して、顧客が中身わからないというキャンペーンだった。予想が大きく当たり、30秒で完売した。35000バーツの収入で利益がわずか6000バーツ。そして、デリバリーが安定してくると、1日400個にアップし、数万の利益が入った。他のデリバリープラットフォームでも販売できるようになり、多少収入が入ったが、まだ、足りなかった。

転換点の一つは、鍋メーカーからの相談だった。デパートに鍋を納品していたが、注文がキャンセルされたため、話を持ってきた。じゃぶじゃぶ+鍋キャンペーンを立ち上げ、鍋一つ販売して200バーツしか利益にならないが、この状況を踏まえて、ないよりはマシということでやってみた。まず、社長の個人フェイスブックで販売したら、150個売れた。そして、大学の同窓会のマーケットプレスで売ってみたら、200個が売れた。実際、会社のファンページで販売を開始したら、1分で1300個の注文が入り、そして、5000個の注文にのぼると、フェイスブックとつなげる関連システム、例えば、チャットボットや決済などが落ちたぐらいになった。当然、Penguin Eat Shabuのフェイスブック・ファンページが炎上した。

早速、コンサートのチケット販売プラットフォーム会社、Eventpopと翌日提携し、イベントがなくなって仕事がなくなったなったEventpopがすぐ予約システムを入れてくれて、余裕に大量の注文にも対応できるようになった。コロナ危機の後も、これらの新領域に積極的に入り、ビジネスチャンスを掴んで行きたい姿勢となった。

このように、コロナ後にも変わっていく消費者の需要に対応し、大企業も国際企業も中小企業も、既存のオペレーションノウハウに囚われず、起業家精神に基づく試行錯誤と新領域の開拓が試されていく時代になるでしょう。

引用元

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